しんすけの実況には、対象ゲームへの深いリスペクトがある。「小悪党がPSドラクエ4を真面目に実況」を笑ってみながらも、強く印象に刻まれていくのは、堀井雄二テキストの凄さだ。
たとえば「第1章 王宮の戦士たち」。王様から、村の子どもたちの失踪事件の解決をまかされた戦士ライアンは、冒険の途中、ホイミスライムのホイミンを仲間にする。ホイミンは人間になるのが夢で、話しかけると、「ライアンさん ライアンさん! えへへ 呼んでみただけ」など、かわいらしいセリフを連発。ホイミスライムは、敵としてふつうに登場するモンスターだが、それ以後、しんすけは、いかなる戦闘でもホイミスライムを倒さない選択をする。どんなに辛い戦闘になっても「ここで倒してしまうと、ホイミスライム界でのホイミンの評判がさがる」と、絶対に闘わず「にげる」コマンドを選択し続ける(わたしはそんなことまで考えず、ばんばん倒した)。しかし、1章のラスボスのいる塔でホイミンは言うのだ。
「ライアンさん ぼくと同じホイミスライムが出てきても なさけをかけちゃダメだよ」
これぞ堀井シナリオ! ホイミスライムを倒すのをためらうプレイヤーがいることを予測し、このセリフを用意しているのだ。あなただったらこのセリフを用意できましたか? と、このページの本来の持ち主でもあるゲームクリエイター米光一成に聞いてみた。すると。
「ホイミスライムを倒さないまま塔にいった場合に発生するイベントにしちゃうかもしれないなー。ご褒美のある隠しイベントみたいな感じで。ここまでフラットにやるのはすごいよね」
という答えが返ってきた。そう、このセリフがすごいのは、ホイミンに感情移入したプレイヤーだけに、「ただの物語」を手渡すところなのだ。攻略でもご褒美でもない物語そのものを。ホイミスライムをばんばん倒してるようなボンクラプレイヤーでは気づかずにスルーしてしまうようなさりげない台詞で。
「ホイミンは、真の戦士だったんだな」としんすけは言い、このあとにホイミスライムが出て来ると「ホイミン、お前が望むなら」と容赦なく倒していく。
このあたりで、「小悪党がPSドラクエ4を真面目に実況」が、優秀なプレイヤーであるしんすけと、堀井雄二との一騎打ち的な動画となることを予感した。それは回を追うごとに確信に変わっていく。
「第3章 武器屋トルネコ」の自由度の高いシナリオを逆手にとった巧みなプレイ構成などは、プレイヤーと作者のコラボレーションを見るようであった。